近年、セメント製造工程においては廃プラスチック、下水汚泥、バイオマス等の廃棄物の大量処理への期待が高まる一方、大気汚染や温暖化ガスの規制強化も進んでいます。当社はこのニーズに対し、経済性や安全性をも考慮した環境ソリューションを提案するべく、太平洋セメントグループの協力を得てTaiheiyo Thermal Reactor(以下TTR®と称す)を開発しました。

Taiheiyo Thermal Reactor (TTR®) の用途

TTR®は予熱されたセメント原料を熱源として利用する設備の総称であり、その用途は多岐にわたります。
被加熱物が下水汚泥等の場合は乾燥機としての機能を、水銀含有ダスト等の場合には蒸発分離機能を有します。 廃プラスチック処理により、仮焼炉でのCO削減、省エネ、燃焼効率向上によるCO2排出削減を実現します。 さらに、ボトムサイクロン原料を消化して脱硫剤を製造する際には消化・乾燥設備となります。

下水汚泥処理例

含水率80%の下水汚泥とプレヒータサイクロンから分取した700℃以上の予熱原料をTTR®に供給し、含水率3%未満に乾燥されます。
乾燥物はプレヒータの仮焼炉に、水蒸気と臭気を伴うガスはボトムサイクロン出口に供給することで熱量損失を回避しています。
また、TTR内は水蒸気およびセメント原料に被覆されるため、火災及び爆発の危険性がありません。

セメントキルンでの下水汚泥処理実績

直接投入方式では、クリンカーの減産を回避するため下水汚泥の処理量は90t/dですが、TTR®導入後は200t/d以上の下水汚泥を乾燥することができます。プレヒータ排ガス誘引ファン(IDF)に余力があれば熱量損失を最小限に抑えてクリンカーの生産量を維持できます。

No sewage sludge
(Benchmark)
Raw sewage sludge
(Direct feeding)
Taiheiyo Thermal Reactor (TTR®)
Sewage sludge feeding rate (t/d) 0 90 172 200
Clinker production (t/d) 4370 4141 4370 41621)
Increase in heat consumption
(KJ/kg clinker)
148 98 138
1) unadjusted value

TTR®と先行技術の比較結果

キルンへ生汚泥を直接投入する場合、CAPEXは最も低くなりますが、クリンカー減産率は最も高くなります。
高温ガスによる直接加熱の乾燥システムの場合、セメントキルンは安定的に運転できますが、熱量損失が大きく、酸素を含む高温ガスを使用すると燃焼・爆発の危険があります。 間接加熱による乾燥システムの場合、設備が大きくなり、CAPEXが最も高くなります。
TTR®はこのような課題を解決できる画期的なシステムです。

System for utilization of sewage sludge
Taiheiyo Thermal Reactor (TTR®) Direct feeding to preheater Direct heating by hot gas Indirect heating by hot gas, etc.
Maximum feed rate of sewage sludge ×
Water content after drying
Clinker production ×
Energy saving for clinker production ×
Capex for sewage sludge utilization ×
Opex for sewage sludge utilization × ×
Construction period × ×
Effect on kiln operation ×
Safety
Heat transfer efficiency × ×
Controllability
Key:  ◎ = Very good    ○ = Good    △ = A little poor    × = Poor